ホワイトクリスマス

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 女王は不機嫌そうに頬を膨らませた。 「何よ、ノリが悪いわね」  が、帽子屋は紅茶をすすりながら 「別に反対はしていない。やりたいなら、好きなようにやればいいさ。不思議の国クラブは各自が好きなことをするためにある」 と肩をすくめる。  誰にも反対されていないのだが、女王は不満そうだ。 「何よ。せっかくのパーティーなんだから、皆で楽しんだ方がいいじゃない」 「だから勝手にやれと言っている。準備が出来たら、招待状でも送ってくれ。パーティーには喜んで参加するとも」  帽子屋はふんと鼻を鳴らした。  他の部員も同じような感じだ。キャタピラですら 「予定が決まったら教えてよ。少しなら手伝ってあげるからさ」 と、煙草を片手にベランダに出て行ってしまう。  冷たいようだけれど、これが不思議の国クラブだ。  お互いに不干渉で、誰が何をするのも自由。利害が絡まない限りは、手助けなんかしない。  その代わり、利害が絡んだ時に団結力だけはすごいと思う。  女王はこの不思議の国クラブの副部長だ。そんなことは当然熟知していた。 「パーティーの準備をすると、何かいいことがあるかも知れないわよ?」 と思わせぶりに微笑み、唇に人差し指を当てる。 「いいことって何だよ?」  首をかしげたのは三月ウサギだ。  女王がふふん、とどこか得意げに笑んで、王の方を見た。 「部の存続に関ることよ」 「なんだって?」  生徒会に提出する紙とにらめっこをしていた王が、パッと顔を上げる。  女王は言った。 「王のことだから、きっとこの部の活動内容を生徒会にどう言おうか考えてるんでしょう?」 「そうだけど…」 「そのことなら簡単に解決するわ。もちろん皆が協力してくれれば、の話だけど」  思わせぶりな口調に、王は眉を寄せた。 「何かろくでもないこと考えてるんじゃないだろうね?」 「失礼ね。そんなことないわよ」  女王は両手を腰に当てて、憤慨の顔をした。それから肩をすくめ、彼女はこう言った。 「クリスマスパーティーを開くのよ。それが部の活動内容になるわ」 「は…?」  王がきょとんとしている。  あたしも思わず首を傾げてしまった。 「どうしてクリスマスパーティーが関係するの?」 「ただのクリスマスパーティーじゃないわ。全校生徒で、クリスマスパーティーよ」 「ぜ、全校生徒?」  余りの規模の大きさに、空いた口が塞がらない。
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