2966人が本棚に入れています
本棚に追加
/140ページ
それは白ウサギも一緒だったらしく、銀縁眼鏡のブリッジを中指で押し上げながら、まじまじと彼女の顔を見た。
「本気ですか?いくらなんでも、全校生徒を参加させるほどのパーティーは無理のような気が…」
が、女王はばっさりと白ウサギの言葉を切った。
「あたしに無理なことなんてないわ。だって、あたし、女王だもの」
にっこりと微笑む女王の自信がどこから来るのか聞いてみたい。
とにかく彼女は
「それだけ大きなパーティーを開催しちゃえば、生徒会もあたし達の実力を認めざるを得ないと思うの」
と言う。
王は溜め息を吐いた。
「まぁ、確かにそれが本当に出来るならね。でも問題は…」
王はそこでちらりと門番を見て、続けた。
「そんな予算がうちにはないってこと。ただでさえ、七夕だとかバレンタインだとか、イベントのたびに部費使ってるんだから」
門番もぱたんと本を閉じ、それに同意する。
「全校生徒を参加させるようなパーティーを開くには、それなりの予算も掛かる。部費は足りないし、そんなことに使うわけには行かない」
が、女王は負けなかった。
「要するに、お金がどうにかなればいいのよね?」
「まぁ、それはそうだけど…」
そんなことは無理だと言わんばかりに、王が首を振る。その首をピッと睨んで、女王は
「首を切るわよ。グダグダ言わないで」
と一喝し、王がヒクッと喉を鳴らして黙り込んだ。
彼女は言った。
「お金のことなんて、どうにでもなるわよ。まぁ、見てなさい。さ、行くわよ、白ウサギ」
「はい…っ?」
白ウサギは目を白黒させながらも、女王が部室を出て行こうとしているのを見て
「ちょっと待って下さいよ。どこに行くんですか…っ」
と慌ててバッグを持ち、彼女の後を追いかける。
「いいからついて来なさい。見てなさいよ。絶対に全校生徒のクリスマスパーティーを開きますからね」
女王はそう言ったかと思うと、すぐさま部室を出て行ってしまった。
嵐のように突然やって来て、嵐のようにさっさと去る。
彼女が去ってからやって来た静寂の時間に
「人騒がせなやつめ。一体なんだったんだ」
と帽子屋が呟く。
少なくともその時は、女王がそれを本気で実行に移そうとするなど、考え付きもしなかったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!