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女王が何か忙しそうにしていることは知っていた。部室に来ても、荷物だけ置いてすぐにどこか行ってしまう。
(まさか本気でクリスマスパーティーの準備、してる?)
そう考えないでもなかったが、門番に言わせれば
「そんなのは無理だ。クリスマスパーティーだなんて、一人で学園祭を企画するようなものだ」
ということらしい。
「そうだよね…一人じゃ無理だよね」
実は女王の後ろには、ちょこちょこと白ウサギが従者よろしくくっ付いているのだが、例え白ウサギが手を貸したところで、限界は見えている。
しかし、部室では今度は王ではなく、白ウサギが溜め息を吐いていた。今日は女王はいない。
「はぁ…」
「どうしたのよ、白ウサギ」
あたしが声を掛けると、彼はくしゃりと髪を乱して
「実は…」
と話し出してくれた。
「えぇ?!女王が本気でパーティーを企画してる?」
あたしが驚いたのは無理もない。
「…声が大きいですって…っ」
「ご、ごめん。でも全校生徒で出来るクリスマスパーティーなんて、出来るわけないもの…」
それには白ウサギもうなずいた。
「もちろん、僕だってそう思ってますよ。でも女王様が本気だから、困ってるんじゃないですか」
「…本気なのは分かったけど、でも一体どうやって?」
あたしが尋ねると、白ウサギはまた重いため息を一つ吐いた。
「どうやら他の部にお願いをしに行ってるみたいです」
確かに女王は、お願いが上手ではある。
「お願い」
とにっこり微笑まれたら、何でも言うことを聞きたくなってしまうような不思議な魅力があった。
しかし、それが他の部の人にまで通じるのだろうか。
「お願いって…そんなので、他の部が協力してくれるの?」
「それが僕にも良く分からないんですよ」
白ウサギは不思議そうに首をかしげた。
「白ウサギが分からないんじゃ、あたしだって分からないわよ」
「そんなこと言うなら、ご自分の目で確かめたらいいじゃないですか。ほんとにお願いしてるんですから」
白ウサギが不機嫌そうに眉を寄せる。
「分かった。あたし、直接女王の所に行ってみる」
あたしはそう言って、白ウサギと共に部室を出ることにした。
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