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「でも予算もないのにどうやって?」
あたしが尋ねると、女王はあっけらかんと
「その辺は、まぁ、なんとかなるわよ」
と言う。
言い換えると、つまりその辺のことはよく考えていないということだ。
「でも、それじゃぁ…っ」
あたしが反論しようとするのを、女王は人差し指を一本立てて止めた。
「あたしは女王よ。あたしがやると言ったら、やるわ」
そう言われてしまうと、黙るしかない。
「うーん…」
「じゃぁ、あたし、忙しいから行くわね」
女王はそう言って、スカートの裾を揺らして、背を向けてしまう。
「あ、女王…待ってよ!」
「アリス、王に伝えて!生徒会への報告書には、クリスマスパーティーのことを書いておいてって!」
彼女は一方的にそう言って、さっさと行ってしまった。
残されたあたしは、思わず隣の白ウサギを見た。
「行っちゃった…」
「僕も何度か止めたんですけどね」
彼が小さく肩をすくめて言った。
「まぁ、ずっとこんな感じですよ。参加はしたいけど、手伝うのは嫌だって部ばっかりです」
「そうなの?」
「まぁ、そんなことくらいで諦めないのが、女王様なんですけどね。この調子で、全部の部を回るつもりなんじゃないでしょうか」
「え、全部っていくつあるの?」
それは白ウサギも分からないと言う。
でも、うちの学園はかなり部の数が多い。全部回るのは、相当大変なことだ。
「まぁ、そういうことです。声を掛けるだけでも大変なのに、どの部もパーティーが開かれるなら参加したいというだけのことで、準備を手伝ってくれるわけじゃないし。こんな調子で、本当にパーティーが出来るかどうか…」
白ウサギの言うことはもっともだ。
「それ、絶対止めた方がいいよね?」
あたしが言うと、白ウサギは黒目をくるりと回した。
「女王を止められる人なんて、帽子屋さんくらいじゃないですか?」
「…そうね」
王では頼りないし、気の強い女王に勝てるとしたら、帽子屋くらいなものだ。
「帽子屋に話をしてみましょう」
あたしはそう言って、白ウサギと共に再び部室へと戻った。
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