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あたしの話を聞いた帽子屋の第一声は
「ふん」
だった。
つまり、鼻で笑われただけだ。彼は言った。
「好きにさせておけ。ダメなら勝手にやめるだろう」
「そりゃぁ、そうかも知れないけど…」
あたしの心配をよそに、帽子屋は王に言った。
「女王が言うんだ。生徒会に提出する部の活動内容は、クリスマスパーティーを企画したということにしておけ」
王が目を丸くする。
「でも実際に出来るかどうか、まだ分からないのに?」
「だから、企画したということにしておくんだ。それなら、企画はしたが無理だったと、後で言い訳が出来るだろう」
帽子屋の言い分に、王はしばらくの間はうなっていたが、やがて
「はぁ。まぁ、それでいいか」
と言うなり、報告書を記入し始めた。
「本当にそれでいいわけ?」
あたしが尋ねると、王は肩をすくめる。
「良くはないけど、これ以上考えてたらハゲそうなんだもん」
それに、と彼は言う。
「一応、彼女も副部長なんだから、失敗した時の言い訳くらいは、自分でしてもらうよ」
冷たいようにも聞こえるが、王の言うことはもっともだ。大体、彼一人が悩んでいるのは、流石に見ていて可哀想な気もした。
(いくら女王でも、ひとつひとつ部に声を掛けるなんて無理よね)
あたしはどこかモヤモヤとしながらも、なんとなく新鮮な空気を吸うために、ベランダに出た。
肌がきゅっと引き締まるような冷たい空気の中、キャタピラが煙草を吸っている。
「女王、パーティーのことあきらめてないんだって?」
キャタピラに尋ねられて、あたしは溜め息を零した。
「そうなの。白ウサギもあたしも止めたんだけど、女王は絶対にパーティーは開くって言うのよ。そんなこと、出来るのかな」
キャタピラは少し考えるように遠くを見て、それから細く煙を吐き出して言った。
「出来るかどうかより、やってみることに意味があるのかもよ?」
「まぁ、その気持ちは分からなくもないんだけど。話が大きすぎて」
あたしは肩をすくめた。
「帽子屋なら女王を止められるかなって思ったけど、好きにやらせればいいって言うし。生徒会のこともあるのよ。大変なのは女王だわ」
それを聞いて、キャタピラは長いウェーブの髪をかき上げ、ふっと笑った。
「あぁ、それは帽子屋らしいね」
「不干渉のルールのこと?」
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