共に歩むべき者

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男は青筋を立てて怒っていたが、どうにかそれを抑え込む。 「生意気なガキだ。それよりイイのかよ。ヤツらこっちに降りてこようとしてるぜ?」 たいして年も変わらないだろうと思いながら、彼が指差す先に目をやると、兵士達が必死に足場から降りてこようとしているのが見えた。 危なっかしい動きで、今にも転がり落ちそうである。 慌ててジェメロスはそれを止め、別ルートから下界に降りることを告げると、彼らは涙ながらに二人を見送った。    *   *   * 骨に異常は無いようだったが、痛む身体で足場の悪い洞穴を進むのは、大変な労力を強いた。 ジェメロスは油汗を垂らしながら、必死で男の後ろをついて歩く。 内部は狭く、下へ下へと続いている。二人は両側に手を付きながら、注意深く進んでいった。 「松明(タイマツ)の用意はしてきて無いの?」 「うるせぇな。俺だってそろそろ灯りが欲しいと思ってたんだよ」 男はぶちぶち言いながら袋を探り、銀色の万年筆のようなものを取り出した。 「なにそれ」 「へっへ、見てろよ」 ジェメロスに見えるように手首を傾け、片側の先端を軽く捻(ヒネ)る。すると反対側の先が蛍のように光り始めた。 「人工光源だ。火がなくても光るんだぜ」 得意気に説明するのを耳に入れながら、そっと手を近づけてみる。あまり熱くもない。 「これって魔法?」 「違げぇよ。俺の故郷ジリエザの道具だ」 「ジリエザ? てっきりエズルイヴの出身かと」 言い終わる前に男の顔が豹変(ヒョウヘン)した。 突然胸ぐらを掴まれ岩壁に背中を叩き付けられる。 「あんな国の連中と一緒にすんじゃねぇ!」 ジェメロスが呻(ウメ)くのもかまわず、襟ぐりを引き上げられた。両手で解こうとするが、固い拳はびくともしない。 ライトの陰影でその表情は凄みを増し、赤い瞳がギラギラと獣のように睨み付けてくる。 「なんでそう思った。髪か? 目か? 好きでこんな色に産まれたんじゃねんだぞ」 確かに、ジェメロスが思い込んだ理由はそこにある。 炎のドラゴンが守護するエズルイヴ国の人間は、赤毛に赤い瞳をもつのが特徴で、鋼のドラゴン守護のジリエザは灰色の髪と目の人間が多い。 先入観で見てしまったのは失礼だったかもしれない。 しかし
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