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「ジリエザとエズルイヴは友好関係にあったはずだろ。なんでそんなに嫌うんだよ」
「チッ これだから城育ちの坊っちゃんは」
ようやく拳を解かれ、身体が自由になるが、落ち着いてきていた全身の痛みがまたぶり返す。
壁にすがり付いて痛みを堪えるジェメロスを、男は蔑(サゲス)んだ目で見ていた。
「お前みたいに、苦労も知らずヌクヌクと生きてきた奴は、そうやって表面しか見ねぇんだ。なんも知らねぇでよ」
「知らないのはどっちだよ」
反論したジェメロスに、男は殺意のこもった眼差しを向ける。
しかしそんなことは、どうでもよかった。
足が痛い。
腕が痛い。
背中が痛い。
全身が痛い。
理不尽な怒りをぶつけられ、イライラしすぎて頭が痛い。
「俺は別に城育ちじゃねぇよ」
静かに語るジェメロスに、向けられる視線は何処までも冷たい。
イライラして、うまく思考が働かない。言わなくていいことを言っている。
だけどもう……
どうでもいい
「つい最近まで、掘っ建て小屋みたいなとこ住んで、自給自足で暮らしてたよ」
「なに言ってんだお前。ジェメロス王子なんだろ。文武両道で容姿端麗、ゲーオルギアの至宝(シホウ)と呼ばれる王子さま。俺でも耳にしてる」
「それは兄貴だ」
「ゲーオルギアの王子は一人だろうが。ふざけんのも大概にしろよ」
「俺達は双子だった」
最後の言葉は別段大きくも無かったが、いやに耳に響いた。
双子とは、昔から忌(イ)み嫌われてきた存在で、産まれれば片方はすぐに捨てられるか、その場で殺されるのが当たり前だ。
身分が高ければその存在さえも無かったことになる。
王子が双子
ある意味、ドラゴンの死以上に守らねばならなかった秘密かもしれない。
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