共に歩むべき者

16/17
554人が本棚に入れています
本棚に追加
/555ページ
   *   *   * 太陽は遠退き、月が夜を連れてきた。 煌々(コウコウ)と明かりを灯したエリアールの村は、もう目と鼻の先。 「しっかしお前さぁ、俺に感謝しろよぉ」 隣を歩きながらガイストは言う。ジェメロスは半眼で先を促した。 「だってよぉ、俺のお陰で任務も終わって、城に帰れる訳だろ」 「そのことね。……お前背中にドラゴンの形のアザってないよな」 「は? なんだそりゃ。んなもんねぇよ」 「だよな」 落胆半分、安堵半分。手早く見つかって欲しいところだが、彼を王に会わせるのは骨がおれそうだ。 「それがどうしたよ」 「そいつを見つけ出して、城に連れ帰るのが今回の目的」 「うへ、めんどくせ。ま、俺には関係ねぇからな~。あーあ残念だなぁ、俺にアザがあれば手ぇ貸してやんのによ~」 白々しい言い方だ。 帰りついたエリアールには、昼間見られなかった住民が溢れ、ジェメロス達を迎え入れた。 「王子様。ご無事でしたか!」 「村長この騒ぎは?」 「王子が討伐に向かって下さっているのに、我らが安穏(アンノン)としている訳にはいきませんから」 村中に火が焚(タ)かれていた。人々も松明を持ち、昼のような明るさだ。 魔物は明かりを恐れるという迷信がある。 勿論火を灯すのは今夜の限りでは無いだろうし、洞穴で会った魔物は照らされても怯まなかった。 言い伝えは言い伝えに過ぎないことを、わかってはいても何かせずにはいられなかったのだろう。 「心配しなくて良いよ。魔物は彼が退治した」 「ドラゴンの剣士様! 生きておられたのですね」 村長の言葉にガイストを振り返る。彼は肩をすくめて見せた。 「何でかコイツ等、俺のことそう呼ぶんだよ。気になってたんだよなぁ。何でだ?」 村長はサラリと答える。 「剣士様の背には、ドラゴンの形をしたアザが御座いましたので」
/555ページ

最初のコメントを投稿しよう!