命盗みの魔女

3/19
554人が本棚に入れています
本棚に追加
/555ページ
「え~……つまり。国のため刻印を持つ人間を集める必要があって。それが俺とお前、あと3人目をペスカに迎えに行くと」 「3人目の居所を、知ってる人間を迎えに行く」 「ややこしいな」 「いい加減覚えろよ」 宿に着き、本日何度も繰り返してきた会話にお互い嘆息する。 ドラゴンの死については伏せた上での説明だったが、理解力のなさに疲れが出る。 「だいたい何で俺たちで迎えに行くんだ? 一国の王子がするようなことじゃないだろ」 ガイストが、鎧を外しながらぼやいた台詞に頷きかけるが、腹の中での同意に留めた。 「彼女は大仰なのが好きじゃないらしくてね。兵をぞろ連れて行けば、機嫌を損ねること必至なんだと。しかも、下っぱなんか使いに出せば、適当にあしらわれるのがオチだろうって」 「だからお忍びでジェスが出てって、その御威光で従わせるって訳か。わざわざ顔隠して貧乏旅行な訳がようやくわかった」 「お前のポイントって読めないな。なんでここは理解が早いんだよ」 王子自ら迎えに行くとなれば、普通は動くほかない。相手が国王をも呼び捨てにするような女では、いささか不安が残るが。 「刻印を持つ者が直接行けば、興味を持つかもって思惑もある。兵を連れ回すのも悪い気がしてたし、気楽で良いよ」 ローブを壁に掛けて、ベットにに寝転ぶ。薄汚れた窓から、半分に欠けた月が見えた。 竜の発見から七日が過ぎたらしい。[もう]なのか[まだ]なのか判断に迷う。 「ここまでさせるなんて、よっぽど偉い女なんだな」 「偉いっていうか、偉そう。国の臣下らしいんだけど、国王陛下を呼び捨てしたあげく、上から目線だったし」 「へぇ、そりゃいいや。会うのが楽しみになってきたな」 ガイストはニヤつきながら、腰の剣を外していたが、ふと真顔になってジェメロスを見る。 「国王ってお前の親父だろ。えらく他人行儀じゃねぇ?」 質問に顔をしかめた。
/555ページ

最初のコメントを投稿しよう!