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いつになく真剣な顔をしていたので、ジェメロスは思わず身を起こす。
「聞いたことないな。城に戻った時に確認を」
「いや、いい。知らねぇってことは、やっぱ無ぇってことだ。アレは埋もれるような剣じゃねぇ」
きっぱりと断言しながら、ガイストも向かいのベットに寝転んだ。
沈黙して、天井を睨む。
「その剣がどうしたんだ」
ジェメロスとしてはたいして興味も無かったのだが、何とはなしに尋ねてしまった。
途端横にしたばかりの身を勢いよく起こし、暑く剣について語ろうとする。
「聞きたいか? 実はな」
「やっぱストップ。どうせアレだろ。その剣は世に二つとない名剣で、お前はそれを探して旅してるってとこだろ」
「なんで分かったんだ? お前天才か?」
ガイストの目には皮肉等なく、純粋に驚いているだろう事が見てとれた。
「うん。お前のそういう単純で分かりやすいとこ、凄く良いと思うよ」
「なんだよ、おだてても何も出ねぇぜ?」
「……明日にはペスカだ早く休もう」
なんだか無駄に体力を使ったように思いながら、ジェメロスは早々に意識を手放した。
* * *
ペスカは美しい街だった。
山頂から流れてくる、清らかな川のほとりにあり、白いレンガ造りの家が並ぶ。
薄く霧がかかり、幻想的な風景だ。
「通行許可証をお見せ下さい」
フォンティーヌの青い旗が並ぶ門の前で、若い兵士がにこやかに声をかける。
ジェメロスも微笑みながら、金の押印がされた羊皮紙を差し出した。
「早く出せよ」
「ちょっと待ってくれ、確かこの辺に……。あったあった」
急かされながらガイストが取り出したのは、黒地に赤の印が押された許可証。
兵は少し驚いていたが、なにくわぬ顔で確認を終える。
「有難う御座います。ペスカへようこそ」
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