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青年に見送られ、ようやく二人は入国した。
街中を馬で進みながら、ジェメロスは横の男を盗み見る。先程ガイストが出した許可証はエズルイヴの物だった。
「生まれはエズルイヴなんだよ。育ったのも向こう」
視線に気づいたのか、不愉快そうな顔で前を見たまま、説明を始める。
「でも、親父もお袋もジリエザ。だから俺もジリエザの人間だ」
「了解」
初めて会った時の怒りといい、ガイストとエズルイヴには大きな確執(カクシツ)があることが伺えた。
ゲーオルギアとエズルイヴの間には、人の立ち入ることが出来ない世界最高峰の山脈が連なるため、直接のやり取りはない。
知られていることと言えば、最強の軍事国家であり、このフォンティーヌとは長い間戦争をしてきたということ。
ゲーオルギアとフォンティーヌの同盟以降争いは沈静化し、好戦的なエズルイヴの気風も様変わりしたと聞くが、国に住んだ者でなければわからない部分があるだろう。
国政に携わることもある王子の身分では、他国の事を根掘り葉掘り聞くのは憚られる。
「それでその、ドミナって女はどこに住んでんだ」
「北の外れに家を構えてるって話だよ」
「んじゃ、さっさと行って終わらせようぜ。ケツが痛てぇ」
鞍(クラ)の上で身じろぎをすると、ガイストは馬の足を速めた。
* * *
ドミナの家は2階建てではあるが、両隣と比べれば一回り程小さく、こじんまりとしていた。
国王と渡り合う者の住み家としては、少し不釣り合いだ。
「ここで合ってんのか?」
「報告が間違ってなければね」
半信半疑ながら呼鈴を鳴らす。
中からはなんの物音もしない。
道に面した窓は、全てカーテンがきっちりと閉められており、内部を伺う事もできない。
「留守かな」
「ここまで来てそりゃないぜ。ちょっとどいてろ」
ジェメロスを押し退け扉の前に立つと、両の拳で叩き始めた。
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