第2章

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この少し低めの落ち着いた声は見なくても誰だかくらい分かる。 「お前こそ何してんだよ。巧。」 声のした方を向きながら答える。 その時に隣を歩いていた戸田が目に入った。何と言うか、予想もしなかった人物が現れてテンパっているらしい。目線が定まらずに口があうあうしてる。酸欠の金魚みたいだ。 巧は真顔で 「ん、俺はコンビニにタバコを買いに来ただけだ。」と言う。 「・・・・・・・・・」 「おいっ、黙るなよ。せっかく俺がボケたのにさ。」 ボケだったらしい・・・ 「巧のボケは分かりにくい!もっとはっきり分かるやつにしろ!」 ビシッと指を指して言いたいところだが生憎両手は塞がっているので断念。口だけで我慢した。 「分かったよ、もうボケはやめる。ところで隣の戸田さんは何してんだ?俺にはさっぱり理解出来ないんだけど。」 と、巧は不思議そうな顔をしている。 戸田はと言うと、まだ口をあうあうさせている状態だ。不思議に思うのも当然の事だ。 そんな戸田を見て、いくら何でも好きな奴にこんな顔を見られるのは余りにも不敏に思えたので、気づかせてやることにした。 「お~い戸田。巧が見てるぞ。」
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