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酷い……だぁ?
自分が勝手に勘違いしたくせによくそんなことが言えるな。
二、三回抱いただけで彼女面しやがって。
女の勝手な勘違いに言葉にふつふつと怒りが沸き上がり、それを堪えていればついに女の目から透明なものが溢れ出した。
泣き出したのだ。
「こんなに……先輩が好きなのにっ……。嫌……。別れたく……ない」
女は流れでる涙ごと手で顔を覆い隠す。
女の言葉にもだが、女の涙に俺の苛立ちは増長された。
泣けばなんでも思い通りになると思っているのか?
同情してもらえるとでも思っているのか?
涙は女の武器というが、ふざけるな。俺にとっては鬱陶しいだけのものだ。
「俺はてめえを好きと言ったこともないし思ったこともねえよ。さっさと俺の前から消えろ。
もうつきまとうな」
きつい言い方だろうがこれは俺の本心。
女は顔から手をのけると涙で濡れた目を大きく見開き、一層顔を歪ませながら、もつれる足で校舎の中に走り去っていった。
「ったく。面倒くせー」
呟きながら、苛立つ俺の心とは裏腹に清々しいまでに青い空を仰ぎ見た。
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