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泣き出した小池を横目で見つつ、うんざりしながらひっそりとため息をついた。
裕也よ、俺が女の涙嫌いなの知ってるだろ。
「え、え、え。ごめんねー。泣かないでー」
泣き出した小池に慌てふためく裕也を睨みつける。
その瞬間、俺の前を何が通り過ぎた。
「ぐふぅっ!?」
「小鈴ちゃんを泣かせやがって!! 小鈴ちゃんを泣かせる奴はうちが許さないんだから!!」
隣にいるはずの鬼塚の怒った声がし、隣を見れば弁当だけ残し誰もいない。
声がした方を見れば、鬼塚が小池を守るように抱きしめ、その二人の前には腹を押さえて苦しむ裕也の姿があった。
この状況を見るからに、どうやらさっき俺の前を通り過ぎたのは鬼塚で、裕也は鬼塚に拳か蹴りを腹にいれられたようだ。
裕也が声もなく苦しむことから鬼塚の攻撃が半端なかったのが分かる。
この女、なかなかやるじゃねえか。
しかも先輩に対してその度胸。更に興味が沸く。
「小鈴ちゃん大丈夫? 教室に戻ろうか。たまちゃんも行こ!!」
「え? ちょっと待ってよ!!」
急いで弁当を片付け、いまだに泣いている小池を支えながら立たせると、この場から去ろうとする。
ちょっと待て!!
やっとてめえといれる時間を得たんだ。
逃がすかよ!!
慌てて立ち上がり、屋上から出て行こうとする鬼塚の腕を掴んで強く引いた。
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