運命について

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怒りから、体がかっと熱くなった。 目に力を込めてそいつを睨み付けるけど、ほんと何も気にしてない風の飄々とした顔だから……。 ああっ!! 駄目!! 更に腹立つ!! 「体を売るぐらい自棄になるなら、素直に泣いておけばいいんですよ。その方が楽になると、僕は思います」 「…………え」 「情けないぐらいに、泣きたいのを我慢してるように……見えました」 「え、ちょっ……な、に、言ってるのよ」 そいつの言った言葉は、私の怒りを根こそぎ奪ってしまった。 それぐらいの、私にとっては意外過ぎる言葉で、呆気に取られて口はきっと半開き。 そいつは眼鏡を指で押し上げながら、お茶飲まないのか聞いてきたもんだから、思い出したようにとりあえずお茶を一口口に含んで。 じんわりとした温かさが、私に冷静さを呼び戻した。 「泣きたい時は素直に泣けばいいと、僕は思います」 もう一度言われて、それは心の内にふんわりと……落ちてきた気がした。 ……そんなこと言われたの、初めて。 私……素直に泣いたこと……ていうか、素直にしたことあったっけ? 素朴な疑問がぽつんと浮かんだけど……そこでやっと、気づいた。 私、素直になったこと、なかったんだ。
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