とある兄弟の嘆き

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「最っ低!!」 俺、何て言われよう? 捨て台詞を残して女は、バッグを手に引っ掻けるなり個室から出ていっちまった。 かつかつとしたヒール音が遠ざかって、ドアを開けて思いっきり閉める音が響いて……。 て、俺のびしょ濡れはどうすりゃあいいんだよ!? 女の態度といい水ぶちまけられたのといい、すっかり酔いは冷めてしまった。 拭くもんもねぇし、頬杖ついていれば…… 「これ。使っていいわよ」 絶世の美女現わる!! 明るい茶色の長い髪を耳の後ろで団子みてぇにして毛先は胸に垂らし、女優並みの女がタオルを手に個室に顔を出してきた。 今まで見たことのねぇ絶世さに、食い入るようにして見ちまう。 「ねぇ。聞いてる?」 「お? あ、あああああ!!」 細く整った眉が怪訝そうに寄せられて、俺の思考は即座にカムバックしたはいいが。 返事がどもっちまってかっこわりぃじゃねぇか……。 焦っちまった俺に気にした風なく、女はタオルを手渡してきて……。 黒のエプロンを腰に巻いてることから、この居酒屋の店員か。
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