死体観賞

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 耳鳴りや、静寂という形を、聴覚は拾い上げ、その流れには特徴的な山なりが自己主張しないから気付かないだけで、音が無くなった訳ではない。  膝を抱えて、フローリングの微々たる溝に足の指の皮膚をなぞらせ、上気した体温を珍しがって足の裏から奪って行く床が、外部からの干渉をあからさまに絶縁したカーテンの隙間から零れて三次元を漂う微量な光の粒を一つずつ拾い、焦げ茶に着色された床表面の色彩を無視して日光が居場所を新たに譲渡され、白く眩しく反射している。
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