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不意に流は肩を叩かれ現実に戻った。
目の前には上司が立っていた。
『流、ちょっと良いか?』
流はそれですべてを理解した。今から明日に向けての話し合いがあるのだろう。そう、あの20億円をかけた殺人GAMEの説明が。
『わかりました。』
周りに気付かれないよう無表情で答えたが。流の心は震えていた。
今になって参加を示した事を後悔し始めたのだ。
流は暗殺者の腕は抜群だった。元々運動神経が良く、頭も良い流には天職だったのかもしれない。流は優遇された。どんどん会社の地位を高めていった。そんな中突然そのGAMEの話を聞かされた。流はやれる気がした。それに賞金は一人四億円だ。そしたら生活にも余裕が出る。静香とのノンビリした幸せな生活。それが流の夢だった。4億円を手にしたらこの人殺し生活も終わりだ。もう二度と人の体から流れ出す鮮明な赤を見なくて済む。それに…。
流には莫大な借金があった。流、本人の借金ではなく、半年前に静香の父の会社が倒産した時にできた負債だった。静香の親父は解散と共にビルの上から飛び下りて死んだ。残された者の辛さも考えずに…。
それからというものお互い働き詰めで夫婦仲はなんだかんだ上手くいっていない。流はこんなに静香を愛してるいるのに。
流は上司に連れられもう一方の会社へ向かった。二人は終始無言で歩いた。時間が長く感じる。いつもなら5分程度で着く道程ももう15分ぐらい歩いた気がした。
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