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「なっ……お前、卑怯じゃないか?」
和音はストックを突き立て、呆れたように呟く。
「お前ら速いな!」
三着で着いたのは、慎だった。
「聞いてくれよ慎……玲医のやつ、助っ人を――」
「良いんじゃないか? 助っ人禁止のルールも無いし……」
和音の言葉を遮りながら、慎が言う。
「しかしだな……」
和音はまだ納得出来ない様子だ。
「和音おにーちゃん……おこってるの?」
そんな和音にフランがソリから降りて聞く。
「いや、別に怒ってるとか……なぁ……」
和音はばつが悪そうに、苦笑いした。
「お三方、速すぎです……」
美鈴が鼻水を垂らしながら、ゴールする。
「あたいを……おいてくな!!」
美鈴のゴールのすぐ後、チルノが凄い形相で慎達のいる場所に突っ込んできた。
「あたいがさいきょーなのに……ビリ……」
そのまま激突するかと思われたが、しっかり止まり涙目になりながらボソリと呟く。
「まっ、まぁ……チルノちゃん、ほらこれ遊びだから」
玲医が小さい子をあやすように言う。
「そうよね、あそびだから勝てなかった……本番ならあたいが勝つ!」
先刻まで泣きそうだった表情は消え、ケロッと明るい笑顔を見せる。
「切り替えはやっ……」
「慎、お前もあのくらいポジティブになれ……」
チルノの切り替えの速さに呆然とする慎と、そんな慎の肩をポンと叩きながら諭すように言う和音だった。
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