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「良い場所だね」
「ぬわぉ!!」
突然後ろから声をかけられ、体が魚のようにビクンと跳ねる。
そのせいで煙が気管に入り、むせて涙目になっているが、崖の下に落ちたのがタバコだけというだけ幸いだろう。
驚きと酸素不足の二つの意味でバクバクと脈打つ心臓を押さえながら、頭だけを振り向かせる。
「あー……あんた誰?」
そして一言目がそれだった。
しかしそんな礼儀知らずな問いにも笑顔を見せ、青年は謝罪と共に答える。
「ごめんねいきなり?
僕はクラウス・アルキュリア
はじめまして、かな?」
歳はカルナと同じ位であろう。
整った顔は芸術を思わせ、銀色に靡く髪によって神秘的な雰囲気を醸し出していた。
「あー、多分はじめましてだな
あんたのこと知らないし」
小さな村、とは言っても人口は1000人近い。
その中に知らない人間がいても不思議ではないだろう。
なぜかその答えにクラウスは笑みを深くして、横失礼するね、と言ってカルナの横に腰掛ける。
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