行き倒れと沈黙の森林街

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「……街のあの状況をご覧になったじゃろうか」 しばらくの沈黙の後、覚悟を決めたように老人が話しはじめる。 「ええ。 あれはいつから?」 「……もう、一月は経ちますな」 「一月も、ですか」 「ええ……奴らは突然やって来ました……」 そこから滔々(とうとう)と、吐露するように苦々しげな口調で、説明が始まった。 話を纏めると、二回前の満月の夜。 その日も街の民は皆、普通に暮らしていた。 しかし、突如として崩された平穏。 アンデッドが街の外から攻めてきたのだ。 東側から大量に流れ込んできたアンデッド達は町中を蹂躙し、相当数の町民を殺された。 幸い夜が深く、夜明けが近かったのと、見張りが直ぐにアンデッドに気付き、町中の手練れを集めたことにより、防御が突破されて少ししたら地面に潜っていったそうだ。 しかし、街の守りに回された人間と、幾らかの町民を殺されたのは事実。 町長である老人と、その周りの人間達は迅速に行動し、夜が来るまでに街からの退避を完了させたのだという。 「……奴らに、町民の5分の1を殺されました…… このままでは殺された民の魂が浮かばれない……」 涙に濡れた顔を上げ、縋り付くような眼光でクラウス達を貫く。 懇願というよりかは、命令。 「お願いします……奴らを……奴らを倒してくだされ……」 切実な言葉は、掠れていたにも関わらず、重々しい雰囲気を纏っていた。
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