行き倒れと沈黙の森林街

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「……僕達は勇者です。 困っている民を助けるのが勇者の仕事」 「それに、私達も中に仲間を残してきました」 「おお……それでは……」 クラウスは、こくりと神妙な顔で頷き、真剣な眼差しで老人を見据える。 「ええ、その依頼お受けしましょう。 しかし……」 「何も突破口がなければ、私達としてもどうしようもないのが事実です。 何か情報は……無いのでしょうか?」 「あります。 ありますとも」 先程とは打って変わって、嬉々とした表情で応える老人。 街にもう一度戻れるかもしれない。 そんな嬉しさが滲み出ていた。 「我々とて無為に一月を過ごしてきた訳ではありません。 幾人かは朝は街に戻り、文献を調べていました」 「……それで、調べた結果は?」 「奴らの正体はアンデッド。 殺しても死なない化け物です」 「アンデッド……か」 話は聞いたことがある。 昔魔王軍さえも退けた、最強とも噂される魔物。 「しかし奴らには一つ弱点があります」 どうやらその文献を持ち帰っていたらしく、テントの隅に置いてあった古びた本を取って来ると、テーブルの上に慎重に置いた。 本には黒い表紙に金色の文字で「魔物全集」と書かれてあった。 あれ程大きな街の図書館ならば、このような本は腐るほどあるのだろう。 「奴らアンデッドは、弱点を隠すために集団で行動しています。 その弱点こそが……こいつ」 本をパラパラとめくった老人は、とある一ページで手を止め、その見開きをクラウス達に向けた。 そこに描かれていたのは、服を着て簡易な武装をした、骸骨。 「……あのアンデッドを取り仕切る、いわばリーダー。 こいつを倒せばあの群れはそのまま塵に還るそうです」 「……そうですか」 険しい顔をしたクラウスの視線の先。 そこには、骸骨の戦闘力を表す評価『A級』が示されていた。
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