286人が本棚に入れています
本棚に追加
「むう……カンナ殿は我が儘でござるな……」
「え、何? これ俺が悪いの? 何で俺責められてんの?
あとそろそろ俺の名前覚えろ」
「あはははははっ!!」
もう耐え切れないと言わんばかりに、ユリルは腹を抱えて大きな笑い声を響かせた。
笑いすぎたせいで目元に浮かんだ涙を指の背で拭い、うっすらと笑みを浮かべたまま、口を開いた。
「こんな状況なのに……緊張感もなにもないね」
「主にこいつのせいでな」
「む、失敬でござるな」
カルナに人差し指でさされたシュウザは、本当に心外そうな顔で立ち上がった。
「言ったでござろう?
こういう時は慌てた者が負けである、と。
少しは落ち着いたでござるかカルル殿?」
「お前、わざとこんなこと……?
あと名前もわざとだよな……?」
「おっと、失礼シャルル殿」
「最早原形さえ無い!?」
何処までがわざとで、何処からが天然なのかイマイチ掴めないシュウザであるが、このような状況に場慣れしているのは事実のようだ。
はあ、と大きく溜息をついたカルナは、仕切り直すように頭を乱暴に掻いた。
「焦ったとこで何にもなんねぇしな……
とりあえず、状況を整理しよう」
「ん、そだね」
「了解でござる」
最初のコメントを投稿しよう!