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「これは雑油、と呼ばれるものでござってな。
そこらの雑草から作った油でござる」
キュポン、と甲高い音をたてて瓶の蓋が開けられた。
「この中味を宙に飛ばし」
少量の油を右手の平に垂らすと、それを宙へと投げ上げ、
「拙者の剣技にて火をつける」
腰に差した刀で、目にも留まらぬ速さでそれを切り裂いた。
と同時に、投げ上げられた油は摩擦により着火し、一気に燃え上がる。
が、少量だった故に延焼することもなく、直ぐに鎮火。
「これが種明かしでござるよ。
他にも水遁、風遁、土遁などがござってな──」
「いや、いい。
ありがとよ」
「む、左様でござるか。
お役に立てたのならば恐悦至極」
再び思考の海に沈むカルナ。
沈黙が続く。
ユリルとシュウザは、カルナが何をやるのか(やらかすのか)ワクワクと待っており、楽しみを前にした子供のようであった。
「よし、どうにかなるかもしれない」
「本当?」
「ああ。
リムナ」
「……何だ」
魔力を使い果たしたせいで、ずっと怠そうに肩に腰掛けていたリムナが、やはり面倒臭そうに言葉を返す。
「まだ、動けるか?」
「……これで最後にしろ」
遠回りな、肯定の返事。
「よし、じゃあシュウザ。
油をありったけくれ」
「承知。
また補充せねばならないでござるな」
不服そうな表情一つせず、二つ返事で答えたシュウザは、袖からどんどん小瓶を取り出す。
総勢、約30個の小瓶。
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