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「カルナ!!さっさと行け!!」
「いーやーだー!!」
とある小さな村の一角。
年期の入った木造の家の前で、小さな闘争(近所迷惑とも言う)が繰り広げられていた。
17、8程の少年が木のドアにかじりつくように掴まり、それを40程の男が、ドアごと引き剥がさんばかりに引っ張っている。
見方によっては誘拐現場のようにも見える彼らの行動のその実は、親子のスキンシップであった。
「さっさと行け!!!」
「だからいやだーー!!」
いや、少々乱暴過ぎてスキンシップとは言えないかもしれないが。
何故彼らがこのような状態に陥った理由を簡単に説明しよう。
時は10分程前に戻る。
―――――――
「あー暇だ……
なんかイベント起きねえかな」
古ぼけた木で囲まれた家の中で、誰に聞かせるでもなくぽつりと呟く一人の少年。
彼の名はカルナ・ヴァイツェル。
しがない武器屋の一人息子だ。
カルナは、少し体重をかけるとギィギィ鳴る椅子に体を預け、武器屋のカウンターごしに座っている。
店番を頼まれているようだが、足を組みながら椅子を傾けているその姿には、砂の粒程のやる気も感じられない。
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