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壁にかかった武器達は、そんなやる気のない店番を見つめながら、売れ残ったことを嘆いているようなオーラを纏っていた。
「あー暇だ……
なんか無いもんかねぇ…」
叶ったら叶ったで厄介そうな彼の願いはどうやら神様に伝わったようだ。
しかし、残念ながら願いを叶えた神様は疫病神のようである。
「カルナ!!」
そのまま吹っ飛んでいくのではないか、と疑う程に乱暴に開けられたドアから、一人の男性が入ってくる。
ライラ・ヴァイツェル。
カルナの父親である。
別に黄金の羅針盤は持っていない。
「んー?
どうした親父
なんか事件でもあったか?」
カルナは気怠そう(けだるそう)にドアの方へ視線を向けると、こちらが脱力してしまいそうな程のんびりとした声で話し掛ける。
しかしそんなカルナの様子など気にかけずに、ライラはカルナへと近づき、虫をつかまえる子供のようにガシリと腕を掴む。
「……ん?
ガシリ?」
カルナはそこでようやく父親の様子がおかしいことに気が付く。
腕を振りほどこうとするが、残念ながらそれは叶わない。
「ちょ?親父?」
興奮しているのか、問答無用、と言わんばかりにカルナを引っ張り、外へ連れ出そうとする。
カウンターに引っ掛かって、偉いことになっているカルナにもお構い無しだ。
「ちょ!? 親父!?
ちぎれる!!
腕と上半身と下半身でちぎれる!!
ちょっ!!」
ようやく息子の危機に気づいたらしいライラは、生命の危機を「おおスマン」の一言で終わらせると、腕をパッと離す。
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