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「殺生丸様。いつまでりんと共に旅をするのですか?」
思いがけない一言に、静かに邪見を見下ろした。
「どういう意味だ」
「ですからその、いつまで旅をするのかと」
-いつまで、だと?
「このまま奈落との戦いに連れて行った時、何卒不都合なことがあるかもしれませぬぞ」
「あるとすれば、何だ」
「例えば人質に取られたりとか…」
確かに前にも、同じようなことがあった。
「それでも構わぬと仰るなら、私はもう何も言いません」
それが数日前のことだ。
「ねえ邪見さま。殺生丸様は、何を探しているの?」
「ーー」
予想外の一言に肝が冷えた。
「殺生丸が自ら人里に来るなんて変だよ」
だって殺生丸様は、人里が嫌いなはずなのに。
(ねえ殺生丸様)
(りんをあの中へ手放したりしないよね?)
ありえない。
だってあの時、言ってくれた。
『この私についてくるのなら、見失わないようにしろ』
一生ついていくと決めた。
その気持ちは今も変わらない。
殺生丸はその後も、時間をかけてあちこちの寺を見回った。
そこらへんの村に預ければ、りんが周囲からどのような扱いを受けるのかは予想できる。
りんが本当の笑顔で過ごせる場所は何処だろうと、そればかり考えていた。
-りんは大丈夫です。
本当は辛いのに、苦しいはずなのに、無理して笑う時が今までに何度もあった。
(私の為なのだろうな)
自分に迷惑をかけないように。
足手まといにならないように、頑張っているのだろう。
ーだが。
我慢すればするほど辛いのが、まだ分からないのだろう。
りんは自分で自分の首を絞めているのだ。
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