プロローグ

2/2
前へ
/54ページ
次へ
 はらり、はらりと何かが降っていた。 「…帰ったぞ」 「おかえりなさい」  もうすぐ父となる青年が、真っ直ぐに自分の腹を見た。 「…名前は」 「?」 「名前は考えたのか?」  首を振ると、青年の瞳が細くなる。 「そうか。…ならいい」 「え?」  何が「いい」のだろうか? 「…何でもない。気にするな」  再び一人になった、もうすぐ母となる女性が夜空を見た。  そして。  ひとつの名前を呼んだ。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

88人が本棚に入れています
本棚に追加