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「…良い月じゃの」
ぽつりと呟くと、背後に人の気配を感じて振り向いた。
「…何じゃ、来ておったのか」
「ああ」
男は女の腕の中にある物に気付く。
「…安産だったようだな」
「もちろんじゃ」
女の隣に座り、赤子に触れた。
「…名前は決めたのか?」
「まだじゃ。何か良い名はあるかの?」
男はそうだな、としばらく考えて答える。
「何か…願いはあるか?
人の世では、親が願望を込めた名をつけるらしいが」
「強い子に育って欲しい、というのならある。お前はどうなのじゃ」
「同じだ。…いつか俺をも越えるくらい強くなって欲しい。この世は弱肉強食なのだから、強ければ生き残り、弱ければ死ぬだけだ」
そして、と話を続ける。
「俺にとって『生きる』ことは誰かを『殺す』ことが多かった」
話し合いで『死闘』を避けられた時もあったが、避けられない時もある。
「この子にも同じような方法で、力をつけて欲しい。
そしていつか、俺を倒せる程強くなれーー殺生丸よ」
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