第九話:眠れる邪神の夢

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彼はまるで、「その基本要素を最初から知っていた」かのように、巧にEOT利用で利益をあげていたのだ。 「あの若造……なんとかせねばならぬやもしれませんな……」 「なんとか、ですか……考えておきましょう。」 そう言って二人は、酒を飲み干し料理を平らげ、手の切れるような新札を店に支払い外に出る。 「では、次は例のサミットの時に……」 「そうですな。楽しみにしていますよ。」 それきり、各々最低限の警護だけを引き連れて、繁華街を後にしていった。 誰も気付くことはない。 ついさっきまで、ここで世界を動かす会談が行われていたことに。 アザトースとは、クトゥルー神話における神であり、「万物の王」、「形なく知られざる者」といった別名を持つ。 一説によると、いわゆる神ですらない何か恐ろしい存在であるとさえ仄めかされるそれは、時空を超越した混沌の中心に、幽閉されているという。 知性も、魂も持たず、醜い姿で眠り続けるという、盲目白痴の邪神。 時は、8月の初頭。 まるで、その邪神の寝息のような生温い風が吹く、そんな夜であった。
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