第十九話:紅い鬼、深き淵より

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『こちら、カゲトラ・アマノよりプラチナへ。目標確保。任務完了。これより帰艦する。』 機械的、事務的な報告。 プラチナブリッジ、マナミとは問題なく繋がり、報告は無事受領された。 ひとまず、任務は完了である。 『プラチナ、了解ですぅ。あの……………掃討戦、アインスト達は…………どうなったんでしょうか……………?』 レーダー上、モニター上で、プラチナも大まかな状況は確認していただろうが。 遠隔地からの断片的な情報では、訳がわからないといった状態に陥っても、致し方はない。 なにせ現実、実際に目の当たりにしたメンバーですら、信じられないといった、どこか空恐ろしい光景だったのだから。 当然、状況を上手く説明できる者などいなかった。 『あの……………皆さん、応答を……………?アインスト達は……………?』 再びのマナミの問い。 トラは小さくため息をつくと、見たままを正直かつ簡潔に伝える。 『全員、鬼に喰われちまったよ。』 『え………………?鬼……………ですか…………?』 『帰艦後、詳しく報告する。以上だ。』 それきり回線を切ると、トラのゴーストMK-IIが先立って帰艦を開始。 教導隊、神鷹部隊各機もそれに倣うよう、戦場を。 否、処刑場を後にしていった。 『(オーガ)、か……………さて、オレはなんて報告すべきかね……………』 最後に残されたヴォルトも、1人呟きながら、ヘルヴォールを後退させる。 オペレーション・ペネトレイト。 その派手な作戦内容と、比喩でもなんでもなく、日本という国の行く末を左右した戦いだったことからも、後々まで有名となる一戦である。 しかし。 その翌日、日本各地で行われていた掃討戦、関東方面の一戦場で行われた戦い。 結果的に、後々「世界」そのものを巻き込むこととなるその戦いは、意外にもあまり知られてはいない。 しかし、それを間近で見ていた教導隊や、自衛隊である神鷹部隊、そして一部米軍機。 更に、撤退を言い渡されたが、納得がいかないとせめて間近で顛末の確認を望んだ自衛隊員達。 または、単純な機体損傷などの理由により、たまたま間近で目撃してしまった自衛隊員達ら、一部の者。 少数ではあるが、彼らの記憶に、この日は深く刻まれることになる。 巨大な紅い鬼。 それが深淵より、現世へ這い出てきてしまった、その日のことを。
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