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「スコール社の社屋や、プラチナのドックといった関連施設に被害が及ばなかったのは、不幸中の幸いだな。」
フォッグ、アリーらは、軽微な被害で済んだ、スコール社の日本支社へ向かっているところだった。
任務を終えたクレメンテ公国行きの部隊が、プラチナへの合流を果たしていたのは、昨日の夜。
アインスト掃討戦があった日の夜である。
マナミへの報告はその日の内に済ませたが、今度は会社への任務完了報告、調査書類の提出等、直接スコール社へと赴かねばならない。
帰国時間を鑑みるに、日を改めた方がいいと、今日の出社となっていたのだ。
「ていうか、日本組の連中、明らかに参ってたものね……………それを含めての1夜の猶予ってとこかしら。」
「だろうな。」
2人の脳裏をよぎる、報告時に顔を合わせた際の、明らかに憔悴したマナミの表情。
ウィーンで別行動を取るべく部隊を分けてから約5日、たったそれだけで疲労がピークに達したのだろう激務。
顔合わせはまだだが、他のメンバーも似たようなものだとは容易に予測がつく。
クレメンテでの戦いも決して楽なものではなかったが、日本のそれも推して知るべくと再認識するフォッグにアリー。
そこへ、フォッグの携帯端末が電子音を鳴らす。
着信はクロードからだった。
「こちら、フォッグだ。どうした、カージュ?」
『こっちはもう、会社に着いたところだ。しかし、多少の問題、と言うべきかは微妙だが……………とにかく、人手がいるかもしれん状況になってきている。』
どこか歯切れの悪い、クロードの物言い。
何か、トラブルが発生しているだろうことは伺えたが。
「………………オレやカーリーも、もう会社の近くだ。わかった。急ごう。」
フォッグは怪訝に思いながらも、そこで携帯端末を切り、懐へしまう。
「ちょっと………………なんかあったわけ?」
露骨に表情を曇らせながら問いかけてくるアリー。
「らしいな。カージュの物言いからすると、穏便とは言い難いが、問題にはまだ至らずといったところか。」
確かなことは、あまり歓迎したくない状況に陥っているだろうことだった。
「笑い話で済む範囲だといいんだけどね……………」
呟くアリーは、急ぎ歩を進めるフォッグに倣うよう、自身も歩くペースを早めた。
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