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「わかったよ……………ほら。」
差し出される小さな封筒。
一見どこにでもありそうな、なんの変哲もない封筒を奪い取るように受け取るトラ。
よほど誰にも見られたくないのか、この場で中を改めようともせず、すかさず懐へとしまいこむ。
「それじゃあ、今度こそお暇を……………」
もはや、1秒の長居も御免とばかりに、慌てるよう席を立つアマノ議員。
しかし、またもやそれは遮られる形となった。
「待ちな、ハゲ。」
マコトである。
しかし、トラの時とは異なり、明確過ぎる程の敵意が、怒気がこもった一言。
「ま、まだ何かあるのかい、マコト……………?」
「まだ何かもクソもあるかよ。このまま無事に帰れると思ってんのか?」
手には拳銃が握られ、その照準は真っ直ぐにアマノ議員を捉えている。
尋常ならざる気配。
杞憂とならなかった予感に、小さく舌打ちをしつつ、いつでも素早く動けるよう身構えるクロード。
フォッグ、アリーも同様だった。
マコトはそんな外野など全く意に介さず、アマノ議員から目を離そうとしない。
引き金にかかる指は、冗談などではないと暗にだが、明確に語る。
事実、そんなマコトの胸中を感知したシャオは、固唾を飲みつつ、2、3歩後ずさってしまった。
「ど、ど、どういうことだい、それは……………?」
「今回の騒動の落とし前、どうつける気だって言ってんだよ。」
アインスト大災害、その直接の原因は、たまたま過剰となってしまったレイラインエネルギーであり、言わば天災である。
当然、誰の責任でもない。
しかし、そのどさくさに紛れて暗躍したアマノ議員により、悪化とまではいかないが、更に事態が混乱したのもまた事実だ。
特に教導隊、スコール社の被った被害は想像以上に大きい。
極めつけは、その当事者にして、知らなかったとはいえ渦中であったマコトからすれば、もっとも過ぎる怒りであった。
「お、落とし前って、親子でそんな鉄血な話があるかい……………!!」
今にも、けじめをつけんと放たれかねない弾丸に、怯えるアマノ議員。
マコトは、なおも無言で銃口を向け続けるが、不意にそれを制するよう、銃身にソッと手が置かれる。
トラの手であった。
「まぁまぁ、落ち着けよ、マコト君。」
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