第二十話:晩夏の夜

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「わかったよ……………ほら。」 差し出される小さな封筒。 一見どこにでもありそうな、なんの変哲もない封筒を奪い取るように受け取るトラ。 よほど誰にも見られたくないのか、この場で中を改めようともせず、すかさず懐へとしまいこむ。 「それじゃあ、今度こそお暇を……………」 もはや、1秒の長居も御免とばかりに、慌てるよう席を立つアマノ議員。 しかし、またもやそれは遮られる形となった。 「待ちな、ハゲ。」 マコトである。 しかし、トラの時とは異なり、明確過ぎる程の敵意が、怒気がこもった一言。 「ま、まだ何かあるのかい、マコト……………?」 「まだ何かもクソもあるかよ。このまま無事に帰れると思ってんのか?」 手には拳銃が握られ、その照準は真っ直ぐにアマノ議員を捉えている。 尋常ならざる気配。 杞憂とならなかった予感に、小さく舌打ちをしつつ、いつでも素早く動けるよう身構えるクロード。 フォッグ、アリーも同様だった。 マコトはそんな外野など全く意に介さず、アマノ議員から目を離そうとしない。 引き金にかかる指は、冗談などではないと暗にだが、明確に語る。 事実、そんなマコトの胸中を感知したシャオは、固唾を飲みつつ、2、3歩後ずさってしまった。 「ど、ど、どういうことだい、それは……………?」 「今回の騒動の落とし前、どうつける気だって言ってんだよ。」 アインスト大災害、その直接の原因は、たまたま過剰となってしまったレイラインエネルギーであり、言わば天災である。 当然、誰の責任でもない。 しかし、そのどさくさに紛れて暗躍したアマノ議員により、悪化とまではいかないが、更に事態が混乱したのもまた事実だ。 特に教導隊、スコール社の被った被害は想像以上に大きい。 極めつけは、その当事者にして、知らなかったとはいえ渦中であったマコトからすれば、もっとも過ぎる怒りであった。 「お、落とし前って、親子でそんな鉄血な話があるかい……………!!」 今にも、けじめをつけんと放たれかねない弾丸に、怯えるアマノ議員。 マコトは、なおも無言で銃口を向け続けるが、不意にそれを制するよう、銃身にソッと手が置かれる。 トラの手であった。 「まぁまぁ、落ち着けよ、マコト君。」
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