第二十話:晩夏の夜

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それに辟易したかのように、マコトがポツリと漏らした。 「アホくさ……………なんか、怒るのもどうでもよくなってきたぜ……………」 ため息混じりの本音。 そして、スタスタと速やかに部屋を後にしていく。 「マ、マコト……………」 マコトと、倒れているアマノ議員、それを見下ろすかのようなトラを、一瞬交互に見比べたシャオだったが。 すぐにマコトを追うかのように、シャオも退室してゆく。 「ウチらは……………どうしましょうかね……………?」 「どうもこうもあるまい………………」 「か、会議室を変えるですぅ。行きましょう、皆さん。」 マナミに促される形で、次々に退室してゆくクレメンテ公国行き部隊のメンバー。 「…………………ちゃんと片付けておけよ、トラ。」 「ハイハイ、わかりましたよ、っと。」 最後にクロードを見送り、全員がいなくなると、再び静まり返る室内。 それを確認したトラは、適当な椅子をその辺から引き寄せ、おもむろに腰かける。 「…………………で。いつまで死んだふりを続ける気だ、親父。」 その言葉に、むくりと身体を起こすアマノ議員。 気絶したように見えたのは、まさに「狸」寝入りだったのだ。 「痛たたたたた……………あ……………歯、折れてる。もうちょっと、手加減してくれてもよかったんじゃないか、カゲトラ?」 もう腫れ上がりつつある頬をさすりながら、床に落ちていたカツラを再び装着しなおすアマノ議員。 無事とは言い難いが、取りあえず大事はないようだった。 「歯で済んでありがたいと思え。あのままじゃ、ホントに鉛弾をプレゼントされかねなかったぜ。」 そんな父親の様子を確かめると、着席したのも束の間、トラもさっさと退室にかかる。 「おいおい。肩くらい貸してくれてもいいんじゃないか、薄情だな。」 「甘えんな。そこまでサービスできるか。とにかく、これに懲りたら、色々と程々にしておくんだな。」 今だ立ち上がらずに座ったままのアマノ議員を押し退けるように、その背後の扉を開けながら、トラは言った。 「ハイハイ。もう火傷しないよう、努々気を付けることにするよ。」 どこか軽々しく返すアマノ議員。 学習はした。 しかし、反省はしていない。 そんな調子であった。 「チッ………………ホントにタチの悪いやつだな。ジ・エー………………エルガン、なんちゃら、だったっけか?」
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