第二十話:晩夏の夜

12/48
前へ
/744ページ
次へ
アマノ親子らの件もあり、クロードらが早く来すぎたためか、ヴァーシュはまだ姿を見せてはいない。 しかし、間もなく日本行き部隊も合流し、彼らも交えての報告となる。 互いが互いの情報を共有するなら、その方が早いためだ。 指定の時間までは後10分。 クロードら3人へ、マナミが着席しての待機を促そうとしたその時。 唐突に開かれた扉から、騒がしい声が響く。 「痛ッ!!乱暴に引っ張るな!!その馬鹿力、ちっとは手加減しやがれ!!」 「これでも充分優しくしてやってんだぜ。いいからキリキリ歩け!!」 現れたのは、アポロとサイファー。 片や全身に包帯、片や上半身を固そうなロープと、いずれもぐるぐる巻き。 拘束したアポロ、拘束されるサイファーといったところだろうが、とにかく喧しい、異様な画であった。 「お、集まってんな。フォッグにクロード、アリー姉さん。久しぶり!!」 「アポロか。どうした、その様は。手酷くやられたようだが。」 「お前程じゃないさ、フォッグ。なんだ、その眼帯?秘められた力か何かか?」 互いの部隊の最重傷者どうしが、どこか笑みを浮かべつつ言い合う。 一方、クロードはそんなアポロの傍ら、明らかに強制的に自由を奪われているサイファーを差しながら言った。 「そんな便利なものがなかったから、この有り様さ。そっちこそ、その傷は?まさか、そこのサイファーさんが寝返って負わせた傷か?」 「冗談。この裏切り者は、きっちり瞬殺したさ。」 鼻で笑いながら、サイファーを見下ろすアポロ。 サイファーは怯む様子もなく、嫌味たっぷりに言い放った。 「そうだったな。その後、総隊長に呆気なく瞬殺されたんだっけな。」 「うるせぇ。」 サイファーの首を、裸絞めの要領で、思いきり締め上げるアポロ。 「ちょ………………苦………………死……………!!」 たちまち、血の気を引かせた青い顔色となるサイファー。 その裏切りと、総隊長というキーワード。 とにかく、訳のわからないクレメンテ公国行き部隊だったが、それもこれから明らかになるだろうと急くことはない。 それよりも、本気でタップを繰り返す、今にも頸の骨をへし折られかねないサイファーに、不安を感じているくらいだった。 そこへ姿を現したのは、マコトとシャオである。
/744ページ

最初のコメントを投稿しよう!

115人が本棚に入れています
本棚に追加