第二十話:晩夏の夜

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「な、なんかうるさいと思えば、お2人ですか………………ていうか、アポロさん、入院してたはずじゃ……………?」 「あんな薬臭いとこにいちゃあ、治るもんも治らんから、強制的に退院してきてやったんだよ。」 事実、アポロの傷は既に塞がりかけており、包帯も最早、仕上げに過ぎない処置。 足りないのは血液くらいで、一番必要なのは充分な栄養である。 医者が学会に発表しようかと、本気で悩んだ異常な回復力。 強制退院という、一見矛盾した訳のわからない言葉に、マコトは妙に納得してしまった。 「そ、そうですか。ご無事で何よりです。本当に人外っすね………………」 いつも通りといった、呆れた様子のマコト。 先程の、アマノ議員とのやり取りを引きずっているかが不安だったクレメンテ公国行き部隊は、ひとまずホッと胸を撫で下ろす。 「アポロ。うるさい。早く黙らせて。」 そして、見苦しく暴れるサイファーと、それを押さえんとするアポロを見かねたか。 シャオはそう言いながら、愛用のスタンガンを差し出す。 「お、おぅ………………」 こういったやり取りに自ら関わってくるなど、以前のシャオからは考えられないことだった。 頓狂に呟いたアポロと同様、クロード、フォッグは目を見開き。 アリーだけは、小さくだが、満足そうに微笑んだ。 「それじゃあ、有り難く使わせてもらうかね。少女の厚意だ。よく味わえよ。」 ニヤニヤとスタンガンを玩ぶアポロ。 「ウ、ウチの特務部隊も顔負けのイカレポンチ揃いな連中だな……………」 そして放たれる、最大電力の一撃。 マコトが、「常日頃」から食らっている一撃である。 「ッ!!」 悲鳴を上げる間もなかった。 特殊工作員として鍛え上げたサイファーの肉体は、成す術なくパタリと倒れ、小さく痙攣。 繰り返す。 マコトからすれば、「いつも通り」のお仕置きと同じである。 「お、お前、苦労してんだな………………」 シャオにスタンガンを返しながら、マコトへ同情するアポロ。 「ちょっとはわかってくれましたか……………」 しみじみとマコトは言った。 「それで、どうするの?この裏切り者。」 シャオは動じた様子もなく、静まり返ったサイファーを、軽く蹴飛ばしながら言う。
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