115人が本棚に入れています
本棚に追加
「い、いや………………報告がてら、全員で精神的、場合によっては物理的にフクロにして、情報を吐かせようと思ったが…………」
「無理っすね。しばらくは目覚めませんよ、コレ。」
慣れきった経験者、マコトは説得力たっぷりに語る。
「じゃあ、椅子にでもくくりつけておけばいいじゃない。」
さらりと言ったシャオは、懐からケーブルタイ、いわゆるプラスチック製拘束具を取り出した。
本来は、コードなどを纏めるための工具で、ホームセンターなどでも簡単に手に入る。
しかし、手軽さ、コストの面も含め、人体の拘束にも優れた一品だ。
少なくとも、歳頃の女子が当たり前のように持ち歩くことには、違和感どころではない不自然さがあったが。
「お、おぉう……………」
「そ、そうだな……………」
取りあえず、敢えて流したアポロとマコトは、それを用いて。
ぐったりと力無いサイファーを、協力してテキパキと椅子に拘束していった。
シュールな画面である。
「お待たせ………………って、何してんだ、マコトにアポロ……………?」
そこへ出くわす形で現れたトラは、怪訝そうに呟いた。
「遊んでるように見えるかよ、馬鹿兄……………?」
「見えねぇよ。だから問題なんだよ。」
何かの冗談と言われた方が、まだわかる。
真っ当なツッコミであった。
「いいから、とにかく手伝えっての、クソ坊主。」
「やなこった。お前ら、今の己の姿に疑問を持った方がいいぞ。」
にべもない拒否。
またしても真っ当なツッコミを入れつつ、トラはテクテクと入室する。
「珍しい人物から、キレのあるツッコミが聞けたな、トラ…………………」
「クロードか。久々に会ったサービスってとこかね。」
微妙にだが、確実に変化している、否、良い方向に進展しているメンバーとは異なり、いい意味で変化のない2人は、小さく笑いあった。
「さて、後は若者2人ね………………」
アリーの言葉に、一同が思い浮かべたのは、2人の少年の顔だった。
今だに姿が見えないシンヤ・ナンブと、ヴァーシュ・ブロウニングである。
トラは思い出す。
ナンブの名を持つ少年、そしてアルトアイゼンに注意しろ、との一言。
つい先程、去り際に父親であるアマノ議員が、餞別だとばかりに言った言葉だった。
最初のコメントを投稿しよう!