第二十話:晩夏の夜

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「い、いや………………報告がてら、全員で精神的、場合によっては物理的にフクロにして、情報を吐かせようと思ったが…………」 「無理っすね。しばらくは目覚めませんよ、コレ。」 慣れきった経験者、マコトは説得力たっぷりに語る。 「じゃあ、椅子にでもくくりつけておけばいいじゃない。」 さらりと言ったシャオは、懐からケーブルタイ、いわゆるプラスチック製拘束具を取り出した。 本来は、コードなどを纏めるための工具で、ホームセンターなどでも簡単に手に入る。 しかし、手軽さ、コストの面も含め、人体の拘束にも優れた一品だ。 少なくとも、歳頃の女子が当たり前のように持ち歩くことには、違和感どころではない不自然さがあったが。 「お、おぉう……………」 「そ、そうだな……………」 取りあえず、敢えて流したアポロとマコトは、それを用いて。 ぐったりと力無いサイファーを、協力してテキパキと椅子に拘束していった。 シュールな画面である。 「お待たせ………………って、何してんだ、マコトにアポロ……………?」 そこへ出くわす形で現れたトラは、怪訝そうに呟いた。 「遊んでるように見えるかよ、馬鹿兄……………?」 「見えねぇよ。だから問題なんだよ。」 何かの冗談と言われた方が、まだわかる。 真っ当なツッコミであった。 「いいから、とにかく手伝えっての、クソ坊主。」 「やなこった。お前ら、今の己の姿に疑問を持った方がいいぞ。」 にべもない拒否。 またしても真っ当なツッコミを入れつつ、トラはテクテクと入室する。 「珍しい人物から、キレのあるツッコミが聞けたな、トラ…………………」 「クロードか。久々に会ったサービスってとこかね。」 微妙にだが、確実に変化している、否、良い方向に進展しているメンバーとは異なり、いい意味で変化のない2人は、小さく笑いあった。 「さて、後は若者2人ね………………」 アリーの言葉に、一同が思い浮かべたのは、2人の少年の顔だった。 今だに姿が見えないシンヤ・ナンブと、ヴァーシュ・ブロウニングである。 トラは思い出す。 ナンブの名を持つ少年、そしてアルトアイゼンに注意しろ、との一言。 つい先程、去り際に父親であるアマノ議員が、餞別だとばかりに言った言葉だった。
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