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アルトアイゼン、即ちゲシュペンストMK-III。
アマノ議員は、何故わざわざ「向こう側」の名称で古鉄を指したのか。
浮かんでくるは、ベーオウルブズ、紅い鬼と呼んで差し支えない戦い振り。
符合する言葉、看過するにはあまりに大きな事実に、ざわつきは収まらない。
一方、クロードも思い出していた。
人造人間、Wシリーズ。
その始まりの個体、比喩でもなく「人外」たるW01。
隠しだてる気はないが、わざわざ言う必要もない。
マナミへの報告を始め、報告書等の辻褄も合わせてはいたが、いつまで保つか。
実際にあれからのヴァーシュの感覚、反射の鋭敏さは、「異常」の領域。
黙せど、いずれ発覚するのは時間の問題だろう。
果たしてその時、他ならぬヴァーシュ自身の選択は。
互いが互いに、尽きない不安要素、それぞれの憂いを抱く最中。
「ま、なんとかなるさ。」
否。
万が一の時には、己らでなんとかするのだと、トラは決意し。
「成るようにしか成らんわな。」
否。
何かがあれば、己らで成すべきを成すのだと、クロードが決意。
2人の、2つの決意が、偶然にも全く同時に行われたのだった。
そして、「件の2人」が入室してきたのも、ほぼ同時である。
「すいません。」
「失礼します。」
クレメンテ公国行き組のメンバーは、シンヤへ目を見張る。
(ほぅ…………………ナンブ……………踏み込んだか、はたまた踏み外したか……………)
(どっちにしろ、一皮剥けたみたいね、シンヤ……………)
(明らかにレベルが飛び抜けて上がってる。代償は大きかっただろうな……………)
一方、日本行き組のメンバーは、ヴァーシュを注視した。
(隙が殆どなくなってやがるな。)
(つーか、他人様の隙を上手く見つけられるようになったってとこか。)
(馬鹿兄の目や、アポロさんの反応とは毛色が違うが………………とにかく、何かがピリピリと、ヤバイ感じがする……………)
両者共に言えることは、「見違えた」、その一言。
それが良い方向か、悪い方向かは別として。
確かに2人は、「男子三日会わざれば、刮目して見よ」を地でゆく成長を遂げていたのだ。
「皆、どうしたんすか?」
「僕達、定刻通りに来たはずですが……………?」
そこに気づかぬ本人達は、とぼけた様子で呟いたのだった。
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