第二十話:晩夏の夜

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「いや、5分前。遅刻じゃねぇぜ。」 「社会人が板についてきたじゃないか、少年方。」 敢えて茶化すように言ったトラとクロード。 そんな2人を制するように、マナミが口を開く。 「シンヤ君………………ヴァーシュ君も、無事でよかったですぅ。」 「楽勝、と言いたいところだが………………」 「色々ありました。これより報告させていただきます。」 落ち着き払った空気。 しかし、随所に垣間見える、不自然だが自然な危うさ。 「体験」による武装、それを剥がせば、そこには「歳相応の少年」しかいない。 場にいる大人達は、それを敏感に感じ取っていた。 「最後に……………副長が合流したら、各々報告を。戦勝報告会ですぅ。」 マナミは、精一杯の笑顔で言い放った。 それぞれが負った傷は、決して浅くない。 しかし、それでも誰一人が欠けずに生きてまた会えた、それを心から喜ぶかのように。 しかし、それを切り裂くような一報が、マナミの携帯端末へ入る。 スコールからのコールであった。 「はい。ニノミヤですぅ。」 『艦長かい。皆もそこに?』 「はい。もう揃ってますぅ。」 『だったら、皆も聞いてくれ。出来るだけ落ち着いてね。』 スコールの様子から漂う、ただ事ではなさ。 怪訝に思いながらもマナミは、端末の通信をスピーカーモードに切り替える。 『たった今のことだ。副長から。ロクロウ・ヤマトから自主退職の申し出。つまり、辞表が提出された。』 衝撃の言葉は、手短に、簡潔に、発せられたのだった。 ○ 「副長!!」 社長室に飛び込み開口一番、マナミは叫んだ。 他のメンバーも、次々に開け放しの扉から入室してくる。 スコールへとデスクを挟んで向かい合う副長は、そんな一同に気づいて顔を向ける。 「艦長。それに皆も。如何が致しましたかな、そんなに慌てて?」 「イカもタコもないですぅ!!どういうことですか、辞表を出したって!!」 「どうもこうもありません。そのままの意味です。」 副長は、さらりと言い放った。 「………………ッ!!」 困惑したような、泣き出しそうな表情で言葉を詰まらせるマナミに、副長はなおも告げる。 「オペレーション・ペネトレイトは成功と相成りましたが。成功とは、被害無しと同義ではありません。」
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