第二十話:晩夏の夜

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そしてもう一つ。 マナミらがここに到着前、副長より直接聞いていたもう一つの「事情」を確認する。 「副長。君の持病とやらは、そんなに酷いのかい?」 「ええ。正直、今も立っているのがやっとです。」 その言葉に、みるみる青ざめていくマナミ。 持病。 立つことすら困難。 そんな状態で今まで、プラチナブリッジに立ってくれていたのか、と。 「じ、持病って………………悪い病気か何かですかぁ……………!?」 「タチの悪い、という意味ではそうですな。」 「ま、まさか、ガンとか………………!!」 「いえ。ギックリ腰です。」 瞬間、スコールはうなだれるを通り越し、思わず机に額をぶつけてしまい。 マナミに至っては、ガタンッと派手な音を立てながら、盛大にズッこけた。 慌てて近寄る、シンヤとヴァーシュ。 「お、おい、しっかりしろよ、マナミ。」 「す、凄いリアクションでしたね。」 2人の力を借りながら、何とか立ち上がりつつ、マナミはアポロに指示を出す。 「アポロさん、椅子になるですぅ!!」 「は……………?い、椅子………………?」 「四つん這い!!早く!!副長の腰が悪化したら、どうするんですかぁ!!」 どうやら、比喩でもなんでもない、そのままの意味らしい。 大方、メンバー内で最も体躯に恵まれている、そんな程度の理由だろう。 「は、はぁ……………了解。では、失礼して……………」 アポロはすごすごと副長の傍らに赴き、四つん這いの体勢となる。 副長は、明らかに表情を曇らせながら、躊躇した様子を見せるが。 「副長!!座ってください!!いや、座れですぅ!!」 「は、はぁ……………」 オズオズと、アポロに腰掛ける副長。 奇妙、否、気味の悪い画だった。 副長、アポロ共に、「どうしてこうなった」とばかりの微妙な表情。 外野であるクロード、トラなど、笑いをこらえるのに必死であった。 「と、とにかくだ、副長。ギックリ腰………………?そんなに悪いのかい?」 「社長………………ギックリ腰を舐めてはいけません。一度なってしまえば、妙なクセがつき、まさしく一生もの。恐ろしいものです。」 「うむ………………」 同意といった風に小さくだが、力強く頷くフォッグ。
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