川渡し

3/12
前へ
/19ページ
次へ
「おや?」 それを見つけた時も、ぼんやりと水面を眺めていた。 川底からなにか影があるのを確認すると、川渡しはその影の正体を見極めるように目を凝らして様子を伺っていた。 そして観察すること暫し。 今回流れて来たものが、いつもと違うぞと感じていた。 いつもなら、川底に影が現れると、間を置かずその影の物体は浮かび上がってきて流され行く。 しかし、今回は見つけてから浮かび上がってくるのを待っているにも関わらず、水面に現れないのだ。 「どうなっている?」 今までにない状況に、川渡しは困惑した表情を浮かべていた。 川渡しは、川の中に入る事が出来ない。 だから、川底に見えた影を確かめる術は、それが水面に浮かび上がってきて初めてそれを拾い上げる為に、水面を歩いて近付き岸辺へと避難させるのだ。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加