川渡し

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だが、その物体は川の中を自らの力で川の流れに逆らって川底を進んでいることに気付き、川渡しは目を見開き様子を見ていた。 川底に見えていた影は、やがて色がつきはじめる。 影が人の形を現わすと、色の配置も確認することができた。 金色に輝く髪は長く川の流れに揺られ、白色の服がその人物の体をかろうじて隠していた。 川底を歩くその人物は、ゆっくりと川岸に近付き顔を水面から出した。 見たところ少女のようだ。 色白の肌に青い瞳、金色の髪は水に濡れたせいで額に張り付いていたが、気にすることなく周りの景色に視線を向けていた。 そこで、川岸に座って観察していた川渡しと目が合うと、瞳を和ませ薄紅色の唇が言葉を紡いだ。
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