星陽色・春川莉利奈

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「いいか」 「もうさよならなの?」 寂しそうに、莉利奈が言った。 エスピールは一瞬目を伏せたけど、いつものように笑い飛ばす。 「まあな!寂しくなくもないけど別れはつきもんだからな。元気でな」 「エスピール、本当にありがとうね。私が素直に感謝するのなんて稀なんだからちゃんと聞けよ」 「はいはい。どいたまー」 相変わらずだ。 隣で笑う莉利奈がいなかったら本で殴るところだった。 「じゃあ行くぞ」 静寂が起こる。 少しだけ、風が吹いた気がした。 暖かい日差しのなか、徐々に白く輝く本をエスピールが開いて―― 「ふぉあっ!?」 あっけにとられている間に、意識がなくなった。
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