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「問三は春川さん。で、問四が――」
当てられて立ち上がった生徒をぼんやりと眺めた。
退屈な現代文の授業は外を眺めて過ごすと決めている。
その平和が少し乱されそうだ。
「――問七は星さんね」
星というのは私の名字だ。
窓際の列の前から順に当てられていたから予想はしていたけど、面倒くさい。
私は小さくため息をついて立ち上がる。
問の内容は漢字の書きだったので、黒板に書きに行かないといけない。
「あれ、問題なんだったっけ」
手ぶらで黒板に向かっていた春川さんが席に引き返そうとした時、後ろを通っていた私に軽くぶつかった。
小柄な彼女から、優しく甘い花のような香りが立ち上がる。
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