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「あ、ごめんね、陽色ちゃん」
彼女は丸い茶色い目で私を見上げたすぐ後、満開の桜のような明るい笑顔になった。
その声に気がついたのか、教卓に最も近い席の林さんが、伏せていた顔を上げて春川さんに声をかけた。
「莉利奈、教科書なら見せてあげないこともないよー」
「あれ、さっきまで寝てたのに。じゃあ見せて欲しいな」
結局何も言わなかった私を気にかけるように、ちらちらこちらを見ながら、春川さんは林さんの席に向かった。
私は無言で黒板に向かい、白いチョークで問の答えを記す。
「徐行」。よく「除行」って間違える人いるんだよね。
他の生徒にぶつからないように注意しながら、私は自分の席に戻った。
また平和が訪れることにほっとする。
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