星 陽色

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「何ページ?」 「五十だよ。芽衣、やっぱり寝てたでしょ」 「ふふん、秘技・狸寝入りだもーん。上手いでしょ」 「またそんなこと言って。いつも教卓目の前の席で授業中熟睡して、先生方に怒られるのは誰?」 あたしでーす、と大声で元気良く手を挙げて案の定教師に怒られる林さんをぼんやり眺めていたら、また春川さんと目が合った。 笑いに包まれるクラスを楽しそうに眺めながら右手で髪を撫でつけていた彼女は、その手を止めて私に微笑みかける。 私は目を逸らしてから会釈をした。 外は晴天、秋の柔らかい日差しが窓を通して私の視界を明るく照らす。 それが目障りで、教室の端の席に座る私だけが太陽から逃れるようにカーテンを閉める。 外が見れなくなったことに気がつき、暇になってノートの端にいたずら描きをしてみることにした。 ……幼稚園児の描いたような猫が出来上がり、すぐに消しゴムで消す。 絵は苦手なんだよね、私。
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