星 陽色

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眠くなってきたから寝ようと思い立ち、教科書を閉じた。 星 陽色(ほし ひいろ)。 四月に油性ペンで書いた名前は、十月にもなるとかなり薄れて読みづらい。 筆箱をあさって油性ペンを取り出し、書き直す。 「はい、全員正解」 国語教師が黒板に丸を描くこともなく口頭でそう言ってから、何か話しはじめる。 もちろん私は聞いていない。 「徐行」は「除行」と間違えやすいから気をつけろ、だとか私でも言える単純なことしか喋ってないんだから、聞く価値もない。 「あら、また林さん寝てる。さっき狸寝入りって言ったばっかりなのに。ね、春川さん」 「はい」 春川さんが笑いを含んだ返事をしたのが聞こえて、さっきの笑顔を思い出した。
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