星 陽色

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「ほら林さん、起きて。もう授業終わっちゃうじゃない」 教師がそう言ったそばからチャイムの音が教室に響き渡った。 昼休みに入るからか、皆一気にざわめき出す。 「チャイム鳴っちゃったね。仕方ないな、今日はおしまい」 「起立、礼」 私は委員長の号令に従って礼をしてから弁当を取り出そうと鞄に手を伸ばす。 「星さんちょっと、前ごめんね。空気の入れ換えしたいから窓開けても良い?」 頭上から降ってきた声に少しだけ反応して、でも顔は上げずに頷いた。 ありがとう、という声と共に窓が開いた音がして、風が私の長い髪をさらう。 少しくすぐったい。 同時に冷たい空気が頬をかすめて通って行き、秋の乾いた寒さを感じた。
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