3人が本棚に入れています
本棚に追加
怖じ気づくのはきっと私に恋愛経験が無いからなんだと思う。だけど恋愛経験をするのは楽しみであると同時に恐怖でもあるんだ。
それまで積み上げてきた何かが壊れてしまうような気がして、踏みきれない。だからいつまで経っても恋愛経験はゼロのまま。どうしようもない悪循環。
そんな他愛ない話でも時が進むのは早くて、いつの間にか遅刻ギリギリの時間になっていた。最初に気が付いたのは美香の方だった。
「あぁ、もうこんな時間だぁ」
「本当だ! 今日から歩きだから時間分かんなかった!」
雪の降る中、自転車で行く訳にもいかなかったから仕方なかったんだけど、遅刻したらしたで困ってしまう。一応高校に入ってまだ半年くらいしか経ってないけど皆勤なんだ。
私はそんな下らない栄誉のために走った。本当は怒られるのが怖かっただけなんだけどね。
だけどその甲斐あってか、一応チャイムが鳴る前に校門を潜ることには成功した。玄関の下駄箱の前で安堵の溜め息を吐いた。
「疲れたねぇ」
「うん。久しぶりに走ったよ」
二人とも息切れしている。とりあえず呼吸を整えて靴を履き替えて教室へと向かう。丁度教室に入った時、登校時間締め切りのチャイムが鳴った。
最初のコメントを投稿しよう!