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サラは、その視線の持ち主一人一人を射殺すように睨みつけた。
「何か文句があるの? いっておくけど、私は国民を押しのけ地位権力を奮い我先にと避難していた貴方達に、敬意を払う気は一切無いよ」
頭を撃ち抜かれなかっただけ有り難いと思いなさい。
と、サラは続ける。
その怒気はレクサスに向けていたものとは全く異質。
圧殺されそうな重量感があった。
彼女は単独で国民の避難誘導に尽力していたわけだが、そこで目にしたのは情けないものだった。
国民を守るべき立場の人間が、自分達だけの特別な経路、方法で国民に先立って逃げていたのだから。
これは、先立って誘導したわけではないことは、あの慌てようを見れば明らかだった。
「……誘導は軍事の仕事であった。我々政治専門の人間は、有事の際は先程のように避難することになっている」
「自分の仕事だけやってりゃいいってこと? 帝王が寝返った情報くらい流れて来てたはずなのに……。軍が混乱してるのがわかってて逃げたの?」
「サラ姉、それぐらいにしとけ」
サラがふて腐れたように、声のした方へ振り返ると、レクサスが鼻を押さえながらサラの肩を掴んでいた。
「俺としても、この国が今ガルナディアに間接的にも攻撃を仕掛けるのは避けたいと思う。帝が抜けた穴も影響も結構でかい。この国はぐらついている。国民の為にも戦争は避けるのが懸命だ」
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